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カサブランカ 堀切沙織
「知ってる? カサブランカって言葉はね、白い家、って意味なんだよ」
そんな声が聞こえた気がするまどろみの午後。しかし辺りを見回しても誰もいないのだった。あれは風の音だったろうか? あるいは私は、何か夢でも見ていたというのか? そんな摩訶不思議な体験は、カサブランカにこそふさわしいと言えるだろう。彼女の微笑みは癒しという概念をそのままこの世界へと持ち出したかのようなそれであり、起きながらにして見る夢、それがカサブランカなのだ。「哀愁のカサブランカ」と人は言う。だがそれは、ひどく狂おしい哀愁である。
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