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パリス 小川友佳
『翼よ!あれがパリの灯だ』とは1927年に大西洋単独無着陸飛行に成功したリンドバーグの言葉である。彼が33.5時間かけて大海原を越え、シャンゼリゼの街灯りを見たときの気分に想いを馳せれば、パリスの魅力はおのずから氷解するだろう。それは言わば、過酷な冒険を成し遂げた者のみが到達しうる「理想郷」だ。シャム猫のようなキャット然とした身のこなしは、まさにユートピアに住む小動物を思わせる。そして生まれながらの絶対音感で、如何なるノイズも音階で理解するというデラックスな頭脳。一筋縄ではいかないのが、普段はその能ある爪を巧妙にラッピングしているところだ。きらびやかなオペラ座の地下には、獰猛な怪人が潜んでいる。
※冒頭のリンドバーグの名言は脚色であり、実際最初に放ったのは「トイレはどこですか?」だったという説があることを付記しておく。
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